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重み

隆敏がトムと帰宅した時、紀子はベッドで眠っていた。
「どうやら、珍しく疲れているようだね」
「確かに」
隆敏は、霊は眠る事はない、と紀子から聞いた事があった。
かなり疲れた時だけだと。
なら、どうして疲れたのだろう。
「まさか二日以上連続で実体化したわけじゃないだろうね。
 隆敏君はもうそんな事しなくても見えるんだろう?」
「はい」
「かといって、他のモノ達に襲われたってわけでもなさそうだね」
そう話すトムの横で部屋を見回してみると、机の上に一つ、プレゼントらしき包みが置いてあった。
「なんだ、これ」
その下に引いてあるカードを見つけて取り出す。
“ハッピーバースデー。家賃に入れといて”
「ぁ、今日俺の誕生日だった」
「忘れてたのかい、君は」
「はい」
包装紙を開けてみる。
中にはシルバーの月のワンポイントアクセントに、黒く細い紐を通したネックレスが入っていた。
メーカーは結構有名なものだ。
「高い奴です、これ」
「どうしてそんな物を紀子ちゃんが買えたんだ?」
紀子の方を見ると、手に何か紙のようなものを握っている。
「・・・給与明細だね。駅前のスーパーの。
 どうやら、アルバイトをしていたようだ」
「アルバイト?」
「一応、此処に住んでいるから、住所も此処にしていたようだ。
 他のモノ達のように人間を誤魔化す(すべ)は未だ知らない筈だから」
「よくある怪談の元って、そういうモノ達なんですね」
「そう。僕も時々使うよ。
 これでも、どちらかと言えば僕は女人だから、人間には術が掛かり易い」
「女だったんですか」
「うん。でも、さっきの話の男には術は効かなかった。
 とにかく、ここのところ実体化して、働いてたんじゃないかな」
その言葉を聞きながら、隆敏は首にネックレスをかける。
肌に感じるのは、
軽いはずなのに重いような、少しくすぐったい、温かな、
不思議な重み。



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