「あ、お早う」
紀子は翌日、丁度隆敏が朝餉を味わっている時に起きてきた。
「お早う」
「お早う、紀子ちゃん」
隆敏の返事と同時に、トムが台所から顔を出す。
「お邪魔しているよ」
「あ、はい」
ぺこりと礼をしてふと隆敏の方を見た紀子が、胸元のペンダントに目をやって固まった。
「ああ、これか。有り難う」
隆敏が礼を言うと、恥ずかしさからか紀子の顔に朱がさしたが、
「返ってきてから、手渡すつもりだったのに。何勝手に開けてるの」
強気で言い返す。
「んな事言ってもなぁ。お前寝てたし」
「しかも給料明細握りしめて」
トムが横からいらぬ口を出した。
「見たんですか!?」
更に紀子の顔が真っ赤になる。
「見たよ。ああいうのはちゃんと仕舞っておこうね」
悪びれもない笑顔を作ったトムに、紀子は返せず黙り込む。
「とにかく、働いて買ってくれたんだろ」
その間をついて隆敏は問いかけた。
「うん」
こくりと紀子が頷く。
「有り難うな。嬉しいよ」
「本当?」
「本当」
それを聞いて紀子が見せたのは、
見た方が嬉しくなるような、
輝く笑顔。
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