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凍りそうな月の下

「ねえ、あの子。本当に幽霊なの?」
「そうだ」
退魔用の呪を織り込んだ、黒の上下を着込んだ真は硬い表情で玲奈に答えた。
「……殺すの?」
「殺すんじゃないよ。倒す。退けて、在るべき場所へ逝かせる」
心配そうな顔の玲奈にそう言うと、真は札を数える。
あのままでは隆敏がどうなるか分からない。
真の両親だって、霊に要らぬ情をかけて、挙げ句死んでしまったのだ。
そうとは皆語らなかったけれど、真はちゃんと知っている。
絶対に隆敏はそんな事にはさせない。
あの時、幽霊などいないと誤魔化したという事は、かなり懐柔されているのだ。
自分が玲奈を盗ってしまった時も、かなり悩んだ後で、許してくれた。隆敏はそういう気性だから、つけ込まれやすいのだろう。
そして、このままでは隆敏は弱ってしまう。
そうなる前に、手を打なければ。
「真。行くよ」
親戚が口をつぐむ中、唯一両親の死の事実を知らせてくれた叔父の声が襖越しに聞こえた。
「……真。あのさ」
「何だ?」
「隆敏は、違うよ。
 真が真剣に私の事を想っていたっていうのを、本当に知っていたから、許してくれたんだよ」
「……分かってるよ。何を今更」
「本当に、分かっていたから。冗談や嘘じゃないのを見抜いていたから」
「……?」
首を傾げる。玲奈は何を言いたいのだろう。
「一方向だけで考えちゃあ駄目。
 簡単に信じ込んじゃ駄目」
「俺の親の死に様、言っただろ。分かってるよ」
「………」
まだ玲奈は釈然としない様子だ。
叔父の呼び声がまた聞こえる。
「今行きます!」
襖に手をかけた真に、玲奈が一言、声をかけた。
「冷静に。気をつけてね」

真が駆けだしていったのは、
凍りそうな月の下。



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