「隆敏」
駅から出た通りを家へと歩いていると、真が脇の道から出てきて、声をかけてきた。
「真」
真の住んでいる所はここから離れた所だ。
わざわざ、どうしたのだろう。
「叔父さん関係でちょっと、此処の神社に用があってさ」
そう言って出てきた道の先を指す。こぢんまりとした神社があった。
「そういや、お前の住んでる所、幽霊が出るんだって?」
ぎくっとした。 冷や汗が垂れる。 「そんな事無いけど」
気付かれないよな。気付くなよ真。
精一杯平静を装って答える。 「ふうん。まあいいや。ここらで良い店ないか?
ちょっと飲みにでもいかねえか」 「俺たち、まだ成人じゃないだろ。良い店、なぁ。
『トロイメライ』かな。玲奈と一緒に行けば、いい店だ」
前一人で寄ったが、雰囲気が良く、飲み物が美味しい良い店だった。
「おう。有り難う」 そのまま隆敏は急ぎ足でその場を後にした。
真はそこに立ちつくし、すっと静かに腕を上げる。
烏が一羽そこに留まった。
「由良鈴」
『何だ、主』
「『トロイメライ』は、ただの一般人に見える物じゃないよな」
『隆敏は、幼き頃は見えていただろう?』
「そうじゃないんだ、・・・変な感じがする」
『調べる。待て』
そう言って烏が消えたのは、
恐い程に、
紅い夕焼け空の下。
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