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出会い

とあるマンションの一室。
目の前に浮いている少女を見上げ、床に両手をついて背中を支えながら青年は聞く。
「お前、誰だよ」
「ここに何でか住んでる者よ。結構あんた図太くない? 普通驚いて逃げ出すわよ」
「いや、だってここの家賃安かったから、なんとなくそんな予感はしてたんだ」
「だからって」
「そう怖くもないしな、お前」
安い家賃と利便性に惹かれて引っ越してきた青年は座り直す。
「あ、つまりあれだろ、よくある『この部屋から出てけ』か、『私を追い出さない代わりに住まわしてあげる』とか」
ぽんと手をたたく。
そういうことなら、悲しいことに部屋に呼ぶ彼女もいないし。
先日ふられたばっかりだが、未練はない。
だから、何も問題はない。
しかもその後、彼女の新しい彼氏になった親友に見栄を張って、厄介な約束をしてしまった。
「そうなんだけど。ちなみに後者よ」
少女は、まあ平均よりはいい顔の男の前に降り立つ。
霊の割には足もあるし、透けていない。
「お前呼ばわりはやめてよね。紀子(きこ)よ」
隆敏(たかとし)
「たかとし?」
「ああ」
「結構いい名前」
戸惑った顔から笑顔に変わる。
元の彼女とは違う笑み。
よく見ればそれなりに美人だ。
「とりあえず、浄霊師とかその業界の人引っぱって来ないでね。ポルターガイストは怖いでしょ」
「はいはい。・・・ん?」
「なによ」
「物を動かせるのか?」
「まあね」
「ほかの奴に見れるようには?」
「あんた今見れてるでしょ。できるけど?」
「なあ。俺の彼女になってくれ」
「え?」
さわさわと、ベランダの鉢の上の花が揺れた。
それが、出会い。



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