「ねえ」
「ああ」
「何かしないわけ」
「バイトとか、休みだし」
隆敏は部屋の床にごろりと転がりながら、同じく転がってる紀子の方を見た。
「大学もどうにかなってるし」
「ふうん。 ねえ」
「なんだよ」
「あの人にさあ、未練ほんとはあるんでしょ」
「・・・」
無いと言っているのに。
「無いよ」
「そ」
「なんだよ。やきもちか」
「んなわけないでしょ」
ベランダに通じる窓から陽光が差し込む。
「ねえ」
「なんだよ」
「お腹が」
「空いたとかいうなよ」
「ううん。空かないの」
「なんだよそれ」
「死んでるから、味はして食べれても駄目なんだと思う。お腹いっぱいになれないの」
そう淡々と続ける紀子。日の光をもろに受けているのに、隆敏よりその影は薄い。
「そうか」
隆敏はあいづちしか打てない。
「うん」
「でもさ」
「ん?」
「たまには、・・・食えよ」
「うん。・・・あったかいね」
「ああ」
天気は快晴。
しかし二人はそのまま転がり続ける。
日だまりの中で。
|