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水玉。

水玉。

ラエがウリエルに抱きかかえられて降り立った場所は、ラエも雑誌か何かで見た事のある、鉱石の産地の中でも有名な街、ウィードリムを一望出来る、低めの峠の頂上だった。
主に軽めの鉱石で作られた家が、整然と廃鉱石で作られた道に並ぶ様子は壮観で、美しかった。きちんと緑を所々に植えてあるのが良いと思う。
元々古王国の時代に鉱石を採掘する為に作られたというこの街は、その後鉱石のアクセサリーや、武具の加工などによって更に発展し、しかもこの景観によって観光地となっている、有名で豊かな街だった。
しかしその景観とは対照的に、武具の加工によって黒煙が溢れている地域もあるらしい。それに害され、病になった人々も数知れず。それでも武具職人を目指そうとする若者がいるというのだから驚きだ。
『それが男のロマンなんだよ』と昔ラエの父が言っていた。アフロもそうなのか、と聞くと、それは俺のプライドだ、と答えてそれに反論した母親と喧嘩していた。どうもあの二人、美醜の感覚が微妙に違うようだ。こっちから見れば二人ともひたすらに変なのだが。
そんな事に思いを巡らせていると、ウリエルがとんとんとラエの肩をつついて、それを合図にラエを地面に立たせてくれた。
少しふらつく。丁度そこに大きな木があったので支えにし、今度はしっかりと立つ。
そしてウリエルと二人で、峠を街の方へ下り始めた。



何処の街にも、人の住む限り、なんだかんだ言って生活用品は売っているものである。
ラエは一通り目当ての物を買い込むと、生活用品店を出た。ウリエルは新種の種を買い込む為に、ラエと待ち合わせをした後別行動を取っている。
その前に何故か守りの魔法をラエにかけていった。心配しすぎのような気がするが、好意に甘んじておく事にした。
(待ち合わせまで、どうしよう)
そう考えて左右を見回していると、左の方から、何故か目に付く女性が歩いてくるのが目に入った。栗色の髪に、藍色の瞳。ウリエル程ではないが綺麗な顔をしている。歳は十九程だろうか。
それが、雑踏の中で一人だけ色が付いたかのように目立っている。
他の人は注意を向けていないようだが、ラエはその人が妙に気になる。
数秒後、ああ、と気が付いた。藍色の瞳がウリエルに似ているのだ。よく見ればそれだけでなく、迷いなく歩く姿も、どことなく似ているような。
そう思っていると、彼女はそのままラエの側に来て、にっこりと活発そうな顔を崩して言った。
「貴方、ウリエルのお気に入りね。彼女? それとも、そこまでいってない?」
いきなり核心をついた質問だった。ラエが吃驚して目を見開くと、
「ああ、もしかして、分からない? ならそこまで深くはないのね。
 私の名前は、キャンベルよ。名字は」
そこまで言われた所で、ラエはの頭に電光が走る。
「メーシー=ウォッチサウンドですね!」
姉だろうか、妹だろうか。とにかく、血が繋がっている事は間違いないだろう。十九歳程に見える所を見ると、ウリエルと似た年齢なのだろうか。
しかしそう思ったのが間違いだった。ウリエルの属する天使族という種族をなめてはいけない。
「ええ、そうよ。私はキャンベル=メーシー=ウォッチサウンド。
 ウリエルの母親よ」
声をかけられた時よりも遙かな衝撃がラエを襲う。
若過ぎだった。反則だった。でも、どこかでラエは納得していた。
あのウリエルのお仲間が、普通の筈はないのだと。
結構失礼な納得の仕方だった。
そして更に、向こうから駆け寄ってくる人影を見て、またラエは驚いた。
白銀の銀に靡く髪、信じられない程整った、神秘的でさえある顔に、茶の瞳。
しかしその瞳は明るく、はっきりとした意志を宿している。
確実にウリエルの父親だった。
どちらかというとウリエルは中性的な魅力があるのに対し、こちらは男性的な美形。
そしてやっぱり若かった。
ウリエルはおそらく、およそ四千五百歳程だろう。なら、この人達の歳はどうなるんだ。
そう考えると、軽い目眩がした。