水玉。

水玉。

「ウリエル」
「何。イェン」
ウリエルの部屋で、二人は相対していた。ウリエルはベッドに寝転がり、イェンは腰に手を当ててその様子をベッドより二歩程離れた所で見ている。
「お主、やはりあの娘が気に入っとるな」
「うん」
頷いたウリエルに、イェンは目を丸くする。
「いやに素直だな」
「イェンは『家』だもの。隠してても分かる。最近やっと実感した」
最近、といっても、ラエにとっては下手すれば生まれる前のことだ。
それがちゃんと分かっているのだろうか。イェンはウリエルを眺めて内心でため息をついた。
イェンの知る限り、天使の中で最高齢はウリエルの父親である。それ以上の齢の者達は皆死んだ。ウリエルは寂しいのかも知れない。
それでも、あまり人を住まわせる事のなかったウリエルだ。そのウリエルがラエを住まわせた。それを知った時、天地がひっくり返ったかと思った。
そして、昨日の夕食前。ラエと話していて、何となくその訳が分かったような気がした。
ゆっくりと、ゆったりとした心。前向きな精神。人への気遣い。
いい人を見つけたな、と思う。
「で、どうするつもりだ」
「どうする、って」
「我はお前を応援するぞ」
長く付き合ってきた友に、イェンは笑いかける。
「……もう、暫く、様子を見る」
そうウリエルは答えて、ごろりとベッドの上で一回転した。
「まだ、言ってない。見せてない。俺の、あの性格」
それを聞いて、イェンはまた目を丸くした。ラエの性格だ、『あれ』を見ても大丈夫だろうに。
それが分かっていても、出来ないのだろう。ウリエルらしくない行動だが、それだけラエを気に入っているのだと思うと、今度は何故か微笑ましくなった。
一人の天使の姿が、イェンの胸の中をよぎる。
今年は、来るのだろうか、あの男は。