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水玉。
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水玉。

「ああ、ラエちゃん、洗濯物干しといたからね」
数日後、朝にラエが庭に出ると、キャンベルがいた。
いつの間に帰ってきたというのだろう。洗濯物を干してくれたのは有り難いが、彼女がいるという事はつまり、イザナギもいるという事だ。
そう思って家を振り返ると、どの面下げて帰って来やがった、このクソ親父、と言う怒鳴り声が微かに響いてきた。早速親子喧嘩のようだ。
「ああ、また景気の良い事よね。
 ウリエルって本当に素直じゃないんだから」
「え?」
「あの子、二十歳までイザナギに会えなかったのよ。だから、父親と上手く接する事が出来ないの。
 私も悪かったのよ。父親の事なんて、話した事がなかったから。死んだとでも思っていたんでしょうにね。
 さ、止めに行きましょ」
そう言って、キャンベルは歩き出す。
ラエもそれについていきながら、キャンベルに声をかけた。
「でも、ウリエルって、イザナギさんの事を嫌ってはいないでしょう?」
え、とキャンベルが驚いて振り向く。
「だって、一言も、大嫌いとか、お前は俺の父親じゃないとか、言わなかったじゃないですか」
本当の拒絶の一言を、ウリエルは前の喧嘩で一言も言わなかった。それ以外の罵声なら山程怒鳴っていたというのに。
二十歳でいきなり父親に出会い、拗ねたり、葛藤したりはあったのかも知れない。でも、今や仮にも約四千五百歳。年の功で、ちょっとは整理がついているはず。
本当に素直ではないと思うけれど、少なくとも嫌ってなどいないと思う。
キャンベルは一瞬呆気にとられたように見えたが、穏やかな顔になってラエに笑いかけると、色とりどりの花畑へ足を踏み入れる。
花の香りが二人を包み、そして一陣の風が吹き、多彩な種類の花を揺らした。