水玉。
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水玉。

「ああそうだ、イェン、有り難う」
昼食の後、ウリエルの自室でそう言われ、イェンは目を丸くした。
「我の説得に礼を言うとは、珍しい事もある」
「だって、扉まで透かしてくれたんだし」
こともなげに言われ、更にイェンは目を丸くする。
「お主、気付いてなかったんじゃあ」
「俺は仮にも大天使だもの。
 覗かれていたら分かるし、家の空気が微妙に変わるのも察知出来る。
 この家は、俺の家だし。たとえイェンでも、俺を誤魔化す事は出来ない」
呆気にとられたイェンにウリエルはもう一度、
「有り難う」
と礼を言った。
迫力に満ちた底の見えない微笑みと、この事をラエに言ったら許さない、という言葉を込めた視線と共に。



「どうしたの? イェン」
朝食の後、暫く姿が見えなかったと思ったら、姿を現してからもどことなく挙動が不審なイェンに、昼食を作りながらラエが気遣いの言葉をかけると、
「いや、なんでもない」
と言う答えが返ってきた。
その間に焼き上がる料理。
「そう? ああそうだ、ウリエルに昼ご飯出来たよって言ってきて」
「……ああ」
ウリエル、と言った所で一瞬イェンが跳ね上がった気もしたが、多分気の所為だろう。
ウリエルは美味しいと言ってくれるだろうか。
ラエは胸を弾ませ、皿に料理を移した。