水玉。
水玉。

ぼんやりとした視界の隅で、誰かが頬にふれている。
さわさわと揺れる草。
涼しい外気。
そして、満天の星空。真ん丸で神秘的な月。
夜だ。
ラエは目を覚ましてすぐそう思った。
「夜!?」
ガバッと起きあがって、自分に赤と黄色と白のストライプ柄のブランケットがかかっているのを見つける。
「あ、起きた」
横で人差し指を立てたままウリエルが呟く。どうやらずっとラエをつついていたらしい。
「ご飯作っといたよ」
「あ、ご免なさい! 有り難う」
「うん。あと、食器綺麗だった」
「え?」
かなり頑張って洗ったのだが、いけなかったのだろうか。
「いい子」
くしゃっと髪をなでられた。
不思議と嫌な感じはしない。
そのままウリエルは立ち上がり、家の方へ歩き出す。
「あ、待って」
急いで立ち上がって駆ける。
ウリエルが立ち止まって待ってくれた。
「ねー」
追いついたラエにウリエルが話しかける。
「はっ・・・」
走ったおかげで、少し切れた息を大きく吸い込み、
「はい?」
「クリームソーススパゲッティ、好き?」
クリームソーススパゲッティ。
あのとろける味、滑り込む麺。ラエの好物の一つだ。
「はい!」
「今日のご飯、それだから」
ぼうっとした瞳で、しかし真っ直ぐにラエを見つめてウリエルは言う。
頭一つだけ、ラエより大きかった。
「ありがとう」
歩きながら、ラエが礼を言うと、
「俺も好きだから」
涼しい夜風をきりながら、ウリエルが話す。
月明かりで顔が見えない。
けれど何となく、微笑んでいるように見えた。