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水玉。
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水玉。

卒業式の翌日から、ラエは荷造りを始めた。
荷造りの間、ヒスイが婚約したといって皆を驚かせた。相手の名前や、お披露目はまだだという。会える機会を楽しみにする事にした。彼女と付き合うなんて、どんな人だろうか。紫雲のような人かも知れない。
実は卒業式にも着ていった、ウリエルに買って貰ったワンピースも勿論荷に詰めた。何故かとても汚れにくいので、母校の魔法科の教諭に見せてみると、かなり良い生地で、しかも衣服を使いやすくするための魔法が幾重にも張ってある事が分かった。教諭も目を見張る程の出来映えだったらしい。
何処から手に入れたのか。多分、そういうルートなのだろう。
真麗亭に連絡してみると、求人の広告は出されていない事が分かった。ただ、後一ヶ月もすれば出してくるかもしれない、と主が言っていた。前にも間が開く事があったそうだ。でも、多分出さないだろうと思う。
三日目、土産として特産品の漬け物を買って詰め込み、ようやっと荷造りは終わった。
そして出発の朝が来た。
「お弁当は持った?」
うん、と頷いて、家出したときとは違う寂しげな顔で見送ってくれる、母にほほえむ。父がアフロを揺らして母の肩に手を置き、ちゃんと一年に三回は帰ってくるんだから、と慰めている。
「落ち着いたら連絡してね」
ラエ達が居る駅のホームのベンチに座って、ヒスイがにこにこと笑って手を振った。多分連絡したら確実に自分たちのところへ来るだろう。
落ち着いた感じのヒスイとは違い、ディルクは目をあちこちにやり、落ち着きがない。横からクリスに突かれて、やっとラエの方を向いた。
何、と問うと、少し俯いて、それから、何でもない、と言って頼りなさそうな笑顔を作る。それを見てふっとクリスがため息をつき、
「では、また」
そう言って少し片眉を上げて微笑んだ。
ホームにジョプリンの『ジ・エンターテイナー』がかかる。それから勢いよく列車が静かに滑り込んできた。昔の人々の技術力の結晶。台車のような車輪がなく、風の魔力で浮いて動く。
流石に涙が出てきたが、ハンカチで拭いて後ろを向き、じゃあね、と言って列車に乗った。