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水玉。
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水玉。

「言っちゃいけない事だけど、趣味が悪いって言った」
静かな圧力を帯びた言葉がその口から告げられる。
「別に、あなた達だけなら良い。でも、ラエにまでこんな服を着せようとしないで」
口調はだけはいつものウリエルのままだった。
「うちの親も愛情を押しつけてくるけど、ここまでじゃない」
親がいたのか、とラエはその当たり前の事に少し感心する。この家には住んでいないようなので考えた事がなかった。
ウリエルの放つ怒気の圧力も、慣れればそんな事を考えられる。だがその圧力をかけられている本人達は、それどころではないようだ。
「で、ですが私達は・・・」
「何?」
怯えながらも反論しようとした父をその一瞥のみで黙らせる。
「子供をまさか、着せ替え人形と思ってるんじゃないよね」
さらに鋭くなったウリエルの一言に、
「そんな事は思いません!」
母と父が同時に、今度は恐れも何もかも吹っ飛んだ顔で叫ぶ。そこには純粋なラエへの愛情しか浮かんではいなかった。ラエはさっきの事はさておき、ちょっとジンときてしまう。だからこんな親と付き合って来れたのだ。
「ただ、私達は自分が良いと思う服をラエに着て欲しいだけです」
「でも、ラエは着せて欲しくないみたいだけど」
瞬き一つの間でウリエルが母に反論した。少しだけ怒気が収まった代わりに、何となく視線が鋭くなったようだ。
「着せ替え人形と思っていないのなら、どうしてラエが家出してきたの。俺だから良かったものの、何かあったらどうしてたわけ?」
声も同時に冷たく、鋭いものに変わっている。
「それは・・・」
反論する言葉も見つからず、父母はそのまま弱々しく黙り込んだ。慰めたいような、そうでないような、妙な気分を味わいながらラエはそのやり取りを見つめていた。あの父と母を黙らせるとはたいしたものだが、その分ラエも少し恐い。若い外見とは裏腹な厳しい怒気と眼差し。
怯えている二人を見やり、ふう、とウリエルがため息をついた。 それから変わって呆れたような、けれど穏やか中に厳しさを秘めた声で、
「とにかく。ラエの趣味にも、合わせなよ。案外良いかも知れないじゃない。それとも、まだこんなケンカを続けるつもり?」
諭すように、いや本当に諭す。
「人生、妥協も必要なんだから」
どこか悟ったようなその言葉は、妙に説得力があった。
そう言った後、またふう、とため息をつき、
「じゃあ、ラエ。後は任せた」
ポンとラエの肩を叩いた。
「え?」
「いや、なんか久しぶりに怒ったし、疲れた」
さっきの鋭い眼光を放つ瞳はどこへやら、いつものぼうっとした瞳で言ってのける。
半ばあ然としながらラエが頷くと、ウリエルはほっとした様子の両親を睨み、
「だから、ちゃんと話をしてやってよね」
再び放たれた鋭く厳しい言葉に、目の前の青年が年下のようであるにも関わらず、父と母が竦み上がる。

効果は、言わずもがなだった。

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