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水玉。
12
水玉。

「ああそうだ。これ、お土産」
昼食の直後に帰ってきたウリエルはしばらく自室にこもって結構多かった荷物を整理し、そして二つの紙袋を持って食堂に現れるなりそう言った。
昼食の掃除をしていたラエは手を止め、壁の収納庫にモップをたたき込む。
「お土産?」
そう言いながら、ウリエルの服装を眺める。
帰ってからすぐ自室にこもってしまったからよく見ていなかったが、出かけた時とは違う格好。似合っていて、しかもあんまり商談には問題なさそうな動きやすそうなジャケットとズボン。また家にいる時とはひと味違った感じだった。
「うん、そう。開けていい」
そう言ってウリエルは紙袋の一つを差し出す。
「も一つは食料。美味しそうだったから」
保存庫に入れてくると言って、ウリエルはさっさと食堂から出て行った。
それを見届け、ラエは自分に手渡された紙袋を見る。
なんだろう。
早速それに手を入れて中身を取り出す。
小さな袋が二つと、大きな袋が二つ。
『お土産 ルキル商店』
『旅の思い出 カライド』
などと書いてある小さな二つの袋は入っている店名からして普通のお土産らしい。
そして大きな袋はというと、袋と言うより何かを柔らかそうなうす黄色の紙でくるんであるもので、赤いリボンをかけてある。黄色の紙の模様として、ホップな文字で店名が印刷されていた。
「『Cube』・・・?」
知らない店名だ。
なんなのだろうかと思いながらもそれを開ける。
ぱさりという音を立てて、薄緑の服が出てきた。
薄緑の柔らかい、気持ちのいい手触りの布に、ワンポイントで胸のあたりに黄色の小さな花が刺繍してあるワンピース。
裏地には細かな守りの呪紋が記されている。
「うわあ・・・」
ラエの口から喜びの声がもれた。
見たところ裏地の呪紋は結構高い魔法効果をもたらすようだし、腰のあたりにシンプルな模様の入った布がベルトのようになっていて、サイズ調節が出来る。とても着やすそうだ。
何よりそろそろもってきた服の少なさに困っていたところだった。
嬉しい。
もしかしたら色々、考えてくれたのかもしれない。
それを抱え、ウリエルの所に行ってお礼を言おうとドアの方に向くと、ちょうどウリエルがドアを開けて入ってきたところだった。
「ぁ、ウリエル! 有り難う、これ」
そう笑って言うと、ウリエルは少し驚いたようで、
「あ、・・・うん」
といってほっとしているような、狐につままれたような、妙で複雑で、しかもそういう顔だと、分かりやすい表情で頭をかく。
なんだかウリエルらしくなかった。
「どうしたの? ウリエル」
「・・・それ、気に入った?」
当然のことを聞く。
「うん。ウリエル、色々捜してくれたんじゃない?」
「それなりに」
その言葉が何故か嬉しくて、らえがぎゅっとワンピースを抱きしめると、ウリエルが吹き出した。
そのまま、とても気持ちよさそうに声を出さずに笑う。
「どうしたの?」
ほんの少し少しむっとしてラエが言うと、ウリエルは、
「ラエ、前に着てた家政婦さん達とはやっぱり違う」
「え?」
「多分、服買っても気味悪く思うような人たちだったから」
気味悪く。これを。
「なんで? ウリエル、そんなつもりじゃないでしょ」
「うん」
本当に不思議だ。でも、十人十色と言うし、よく考えれば二週間足らず一緒にいただけだ。そう思う人もいるかも知れない。
「・・・私は嬉しいけどなあ」
「うん。そう思ってたけど、少し不安で。でもやっぱり、ラエはいい子」
そう言って頭を撫でられる。
その心地よさに、少しだけ感じていた不快感が消えていく。
気持ちよさそうな顔をしていたのか、ウリエルが更に目を細める。
「似合うと思う?」
「そうじゃないと、買わない」
あっさりと言う。それはそうだ。
「ありがとう、ウリエル」
明日はこのワンピースを着て、ウリエルが寝そべる横で洗濯物を干して、そしてまた寝転がろう。
勿論晩ご飯は、クリームソーススパゲッティ。
親といる時とはまた違う安らぎ。
少しだけ、胸が高鳴るような。
寂しくないとか、そういうことではなく、改めてやっぱりウリエルがいると、いいなあと思った。