拍手log
拍手のお礼に置いていたものの再録です。
ソフィアがジェットコースターを嫌いになった理由(一人称・ソフィア)
『エリック兄ちゃんが死んじゃうよー!』
『ソ、ソフィア、ただ酔っただけだから・・・そんなに揺らすな・・・うぷ!』
あの時は怖かった。
隣に座ってるエリックがどんどん真っ青になっていくのは、今となっては信じられない程エリックが好きだった私にとって、恐怖のほかの何物でもなかった。
だから、怖くなった。
これは、今では恥ずかしくって誰にも言えない。
おまけ小説(
Angel’s Home読後推奨)
口の中に広がる血の味。
紫雲は自分の顔が殴られたのが信じられなかった。
「・・・あの人にしか殴られたこと無かったのに」
「ああ、そうか」
目の前に立つのは、銀髪に紺の瞳、美形の多い悪魔や天使の中でも信じられない程美しい男。
「まあ、いいか。じゃあ」
紫雲はその男、ウリエルの前にひざまずく。
「よろしくお願いします、ウリエルさん」
時は第二次天魔大戦中期。
若き悪魔の精鋭と、中立組織の幹部の天使。
彼らは、そうして出会った。
+++
変わった出会い方をした二人。
結果は、小説を読んでいただければお分かりかと。
ただ、ウリエルの方が一回り年上だったりするんです。
おまけ小説(
Angel’s Home読後推奨)
「ねえ、ラエ」
「なに? ヒスイ」
「私ね、すっごくかっこいい人を好きになったの」
それにラエは目を丸くする。
「本当!? いつの間に」
「休みの間。ちょっと色々あるみたいだけど、すっごくいい人」
「へえ」
「なんかね、私が飛びつくと厳しいツッコミが入るけど」
「………」
「あとね、手料理作ったら速攻で作り直された」
「へえ……」
「でも、前失恋した時慰めてくれたの」
「………」
「だからすっごく好き」
もしかしてこれは、押しかけ女房というものではないだろうか。
にこにこと笑うヒスイを見て、ラエは密かにそう思った。
そして約一年後、見事にヒスイに押されて押されて落とされてしまった相手と会う事となる。
+++
Angel’s Homeの約一年程前の話。
勘のいい人ならお相手が分かるかと。
ホントは色々あるんですよ。押されたり押したりだけじゃないんです。
ヒスイと『彼』はその内出てきますので、その時にこの話でも思い出して下されれば幸いです。
おまけ小説(
王子と娘読後推奨)
+ある夏の日+
初夏の日の事である。
「ねぇ、レコン」
王国騎士団十三番隊、つまり王子の護衛隊の宿舎の庭にて、その日非番のルクス=シェランは日傘をさし、目の前の同じく非番のレコン=ブラック隊長に話し掛けた。
「ん?」
レコンは斧を振る腕を止め、汗を拭ってルクスの方へ振り向く。
「どうして薪なんて割ってるんだい?
燃やしたら暑くなるじゃあないか」
「………」
「気付いてなかったんだね、君」
「まあな。……そうだ、冬に向けての貯蓄という事で」
「腐るよ」
「……それではつまらんな」
「変なとこでボケるよね、君」
そのまま夜になって、宿舎では盛大なバーベキューパーティーが行われた。
ちょっと抜けていて、しかし頼れる。それがレコン=ブラックという男であるが、時々謎の行動を考えもせずにやるので、要注意である。
+++
なんかよく分からない話でした。
エリックの護衛さん達の日常です。
拍手感謝劇場
「母さん」
そう呼びかけると、母さんは怠そうにその顔をこちらへ向けた。ベッドのシーツが擦れる音がする。
「ソフィア。大丈夫?」
「母さんこそ! どうして熱があるのに無理するのよ!」
「娘の一大事じゃない」
そう言って弱々しく微笑む。
「だからって!」
昨日にも会っていたじゃない。
「無理は良くないだろう、母さん。俺だけが来ても良かったんだから。しかも、あんな事」
「あんな事?」
「いや、何でもない」
そう言って口を押さえる父さん。何か、あったんだろうか。
「このまま明日いっぱいは安静にしていらっしゃれば、治りますよ」
そう言って看護婦さんが爽やかに微笑み、母さんの氷枕を変えた。
改めて医務室の中を見回す。学校の中の、あの真っ白いそれとは、色が同じでも大きさが違った。
その扉から入って左端に母さん、右端から六つぐらいまでに、レコンさんと同じ制服を傍らのハンガーにかけた、たぶんに負傷した護衛隊の人達や、その他の兵であろうと思われる方々などが寝ていた。それでもベッドの余りは十程。
うちの救急箱とベッドとは、格が違うのだ、格が。でもあんまり深く考えると悲しくなるので止めておく。
まあ、ここは王族だけの物でなし。ここで働く方々みんなの物だし。つうか、広くは国民の物でもあるらしい。建前上。
自由に町の皆さんも使用出来るそうだが、そんな規則誰も知らないし知ってても何故か使いたがらない。普通の病院もそこらにあるし。
て言うか、どうしてそんな事を考えてるんだろう。身分が違う事に代わりはないのに。
身分どころか頭も違う。
………正直言うと、私は学校での成績は上の上だ。
いつもトップ15の中に入っている。でも、どれだけ頑張っても一位にはなれない。
エリックなら、一位を取って、飛び級すらしてしまうだろうに。
昔は追いつけると思っていた。だから勉強も頑張った。でも、追いつけない。
政治経済は特に力を入れていても、多分エリックの交渉力・判断力には敵わない。
少し考えれば分かる事なのに、それでもまだあがいて勉強する。
元々、勉強するのは好きだった。授業の内容も聞いた事はすんなり頭に入る。でも完璧にとまでは行かない。
チヨはそれで十分じゃないかと言い、テルブは私の成績表をのぞき見するなりいつも拗ねる。
でも、追いつかない。駄目なんだ。私がどんなに必死になったとしても。
どんなにエリックに、恋い焦……
今、私は何を考えた?
違う、違う、違う! そんな問題じゃない……はず。
「ソフィア?」
In自分の世界で、首を振ったりとか、あからさまに挙動不審な私に、母さんが心配そうな声をかけてきた。
病人に心配されてどうするんだ自分。大体、どうしてあんな風にエリックの事にばかり考えが流れていくのか。
それに、……ついさっき、傍にいても良いって、言って、言われたばっかだし。
ああぁ、また顔が火照ってきた。
なんでこうなるのか。最近特にそう。
「……ねぇソフィア。ソフィアは、エリック君が好き?」
心臓跳ね上がり。
「な、な、な、母さんいきなり何を言うのよ!? どうしてエリックに恋なんてするわけ!?」
「恋じゃあなくっても良いの。好き?」
「うん。好き」
母さんの、熱に浮かされてもこちらをはっきり見つめる瞳を見つめて即刻告げる。
あいつのいない生活は考えられなくて、あいつの笑顔が愛おしくって、好きだ。恋じゃあなくても好きだ。それだけははっきり分かってる。エリックには言ってやるつもりはないけど。
「そう」
そう言って、母さんが微笑む。何かを諦めたような、受け入れるような、そんな微笑み。
どうしたって言うんだろう。
「もう遅いから、ソフィアも風呂に入って寝なさい」
「ん、分かった」
疑問には思うけれど、訊ねてはいけない気がして、私は黙っておく事にした。
++++++
ボツネタです。このシーンはもう少し後にしようかな、とか思ったので。
でも、修正の時に入れてみてもいいかも知れません。
以上、拍手ログでした。メッセージをくださった方、ぱちぱちだけの方、どちらもありがとうございました。管理人の心の糧となりました。
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